麻織物は、盛夏に用いられる麻で織られた織物です。
麻織物が盛夏に向く理由は、
- 水の吸収がよく発散も素早い
- 肌触りがさらっとしていて気持ちがよい
- 丈夫で水洗いに耐える
という理由からです。
現代でこそ汗をかきやすい季節の織物ですが、
綿織物が登場するまでは、年中をとおして庶民は麻織物を着用していました。
「上布(じょうふ)」の意味
上質な麻織物を「上布」といいます。
これは苧麻(ちょま)(いらくさ科の多年生植物で茎の皮の繊維で越後上布(えちごじょうふ)などを織る)を原料にしていて、高級品という意味があります。
この名は庶民の普段着が「中布」、「下布」と呼ばれていたことから、区別するためのようです。
「上布」の種類
上布の種類を紹介します。
- 「越後上布」(新潟県の塩沢や六日町でつくられ軽く透けるように薄い織物)
- 「能登上布」(石川県鹿西地方でつくられる蚊絣の織物)
- 「近江上布」(滋賀県の愛知川付近でつくられる独特の皺のある織物)
- 「八重山上布」(沖縄県八重山地方でつくられるこげ茶色の絣柄が特徴の織物)
- 「宮古上布」(沖縄県宮古島でつくられる、軽くて光沢のある細かな模様が特徴の織物)
「上布」の作り方
苧麻(ちょま)の皮をはいで、繊維だけにして乾燥させ爪で細く割く。
その後口にふくんで湿らせながら撚(よ)ることで糸にしていきます。
この糸にする作業を「績(う)む」といいます。
着物用の一反分の糸を績むだけで、一ヶ月以上もかかるものもあるそうです。
織る際には湿度の管理が欠かせず、微妙な力加減でおり進むのが高度な技術です。
「小千谷縮(おぢやちぢみ)」の特徴
◆麻の着物、小千谷縮(おぢやちぢみ)
麻織物でよく知られているものに小千谷縮(おぢやちぢみ)があります。
模様が横絣(よこがすり)で曲線なのが特徴です。
これは新潟県の小千谷地方でつくられますが、緯糸に強い撚りをかけることで皺(しぼ)をつくりだすので、
肌触りが一層さらりとした感じになります。
手触りはかたいのですが、着心地は快適です。
蒸し暑い夏には最適でしょう。
着物以外の麻製品
◆麻の半幅帯(リバーシブル)
麻の帯もあります。
帯用の糸は着物用の糸よりも太い糸で、精錬を減らし荒くざっくりとした織り方にしてあります。
麻の帯は染も織りもありますが、織った帯は袋名古屋帯に仕立てます。
また麻の長襦袢もあります。
さらっとした肌触りで、盛夏のみならずひとえの季節に着用して涼しく過ごすことができます。
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