◆木綿の藍染めの着物生地
木綿の染色には、藍(あい)を用いた時代が長く続きます。
明治30年ごろに合成藍が登場するまで、藍色は日本中どこにでもある色でした。
そして多くの日本人が藍染めの衣装を着ていることに、外国人は驚き、
明治初期に日本を訪れた外国人が、
日本は藍色ばかりの国ということで「ジャパンブルー」という言葉を残しています。
藍染めが多用されたのは、すぐれた効果や効能があることで、生活全般に藍染を用いられたようです。
ここでは藍染の効果や効能を紹介します。
藍染が長く愛用された理由
◆藍染の服
藍染は衣類のみならず、蚊帳、手ぬぐいなどにも染られていました。
藍染は独特の深い青色を生み出し、その色合いは他の染料では再現できません。
愛用された理由は、主に以下の点です。
- 生地を丈夫にする
- 香りが良い
- 激しい洗いにも耐える
- 防虫効果がある
このような特色のある素晴らしい染料が藍、藍染めなのです。
藍染の効用・メリット
「日本の藍 伝承と創造」(日本藍染文化協会編)という本の中で、
藍染めの効用が詳しく書かれているので、引用させていただきます。
抗菌力がある
「藍染めの衣類は、強度があり、温度変化に対する抵抗力が強く抗菌力を持つために、何百年もほころびることなく見事な色調を保っているものが、数多く残されている。」
保存性が増す
「絹布も藍染めによって保存性が飛躍的に向上するために、徳川家康の藍染めの衣類が、今も見事な色と強度を保ったまま残されている。」
温度変化に強い
「温度変化と磨耗に対する抵抗力がすぐれているため、江戸時代の火消し装束はすべて藍染めの木綿であった。」
解毒の作用がある
「戦国時代の頃から、健康維持、疾病予防、解毒の作用がしられていて、他の染物と異なり、積極的に医療目的でも広く利用されていた。」
保温・殺菌力に優れる
「藍染めの下着は保温に優れ、体臭を外へ出さない。」「殺菌力に優れていて皮膚病の伝染を阻止する作用があり、
江戸時代の城下町ではその衛生上の効果が注目されて、
城の近くに紺屋町(藍染め屋の町)を置いていた。」
吐血効果がある
「藍染めの衣類には止血効果があるため、矢傷に対する有効性が着目され、鎧の下には藍布の衣類を着用するのが常であった。」
防虫作用がある
「さらに防虫作用や毒蛇の攻撃を避ける効果もあったために、野宿にもうってつけだった。」
という内容が伝承されています。
藍染を作る作業は時間も手間もかかるのですが、庶民の暮らしに密着した染料であり、長く愛用されてきた理由がわかります。
藍染をするのは紺屋さん
◆栃木県益子町 藍染工房
布を藍で染める仕事をするのが「紺屋(こうや・こんや)」です。
お城近くに紺屋をまとめて「紺屋町」という一帯がある城下町もありました。
紺屋という呼称は、もともと中世に「紺掻き」と呼ばれた藍染専門の職人を指していました。
しかし、江戸時代に入ると、藍染が非常に繁盛したため、紺屋は藍染に限らず染物屋全般の代名詞となりました。
江戸時代には、日本中に紺屋が点在していました。特に大きな都市では、紺屋の組合である「紺屋仲間」が成立しました。
紺屋の技術は非常に専門的で、長年の経験と知識を必要としました。
1. 原料調達:阿波(現在の徳島県)の農家が栽培した蓼藍の葉を発酵・乾燥させて「スクモ」という原料を作り、これを「藍玉」にして運びました。
2. 染料作り:紺屋は藍玉を藍甕に入れ、木灰や石灰、ふすまを加えて水で加熱し、酵素を活性化させて染料を作りました。この過程を「藍を建てる」と呼びました。
3. 染色:藍染は他の染料と異なり、色素が不溶性のため特殊な技術が必要でした。
紺屋は単なる染物屋以上の存在でした。
1. 庶民の生活との密接な関係:出雲地方では、婚礼の際に嫁入り支度として、筒描藍染の風呂敷や蒲団、たんすを包む油箪などを用意する習慣がありました。
2. 芸術性:紺屋は絵心や色彩感覚が必要な職業であったため、長谷川等伯や歌川国芳など、多くの著名な絵師を輩出しました。
3. 地域経済への貢献:高瀬川沿いなど、特定の地域に紺屋が集中して軒を連ねていたことがあります。
藍染めは明治以降衰退
藍染は明治時代以降は衰退していきます。
明治30年ごろからは合成藍が主流となっていったからです。
藍染の素晴らしい効能は、ほとんど知られることはなくなりました。
現在では、昔ながらの筒描藍染を行う工房は全国でもわずか2〜3軒程度となっています。
しかし、一部の工房では伝統技術を守りつつ、新しい商品開発やコラボレーションを通じて、藍染の可能性を広げる努力を続けています。
蓼食う虫も好き好き
◆ヤナギタデ
「蓼(たで)食う虫も好き好き」という言葉がありますね。
「蓼食う虫も好き好き」は、人の好みの多様性を表現する日本のことわざです。
このことわざの意味と使い方についてみてみましょう。
このことわざは、「人の好みはさまざまであり、自分の価値観だけでは一概に判断できない」ということを表現しています。
ことわざの由来は、
「蓼(たで)」は、という辛味のある植物を指します。
通常、虫は辛い蓼の葉を避けますが、それを好んで食べる虫もいるという観察から生まれました。
このことわざは、以下のような特徴があります。
1. 他人の趣味嗜好を否定する文脈でも使用されることがあります。
2. 皮肉っぽい響きがあるため、使用する際は注意が必要です。
3. 特に恋愛や結婚の文脈で使われることが多いです。
より中立的な表現を使いたい場合は、以下のような言い方ができます。
- 人それぞれ
- 十人十色
- 好みは人それぞれ
色落ち色移りしないのが本藍染め
◆藍染の糸で織る絣
江戸時代のままの藍染めのやり方を「本藍染」
といいます。
何度も染料につけて色の調整をしますが、その都度天日干しすることで、
色落ちも色移りもしない藍染の布ができあがります。
現在は本藍染めをする紺屋は、全国でも数えるほどしかありません。
ジーンズの青色はインディゴブルー
ジーンズはインディゴブルーというインドアイで染められ、色落ちや色移りします(合成インディゴも)。
藍染のデメリット
藍染のメリットばかり紹介してきましたが、以下のようなデメリットがあります。
<藍染のデメリット>
- 時間と労力: 藍染は手間と時間がかかるプロセスであり、一部の染料は長時間浸漬する必要があります。
- 色の不均一性: 藍染は均一な色を出すのが難しく、色むらが出ることがあります。これは一部の人々には魅力的に見えるかもしれませんが、一貫した色合いを求める人にとってはデメリットとなる可能性があります。
- 色落ち: 藍染の色は時間と共に褪せやすいです。
藍染の効果や効能・メリットとデメリット/ジャパンブルー/着物用語・まとめ
手間のかかる藍染めですが、抗菌力が増す、生地の強度が増す、保温に優れ体臭を外へ出さないなどの効果・効能があるとして、
日本では江戸時代から明治30年ごろまで愛用されてきました。
本藍染めの技術を残し、素晴らしい製品を作るところは少なくなりましたが、日本の文化の伝承として体験できるところもあります。
日本でも本藍染めのジーンズなどを作製しているところがあるようです。
<関連ページ紹介>
◆藍染の染色方法を簡単に・すくもから藍液への作業
◆藍染の木綿の反物ができるまで・製作工程(愛知県三州足助屋敷)
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