麻織物は、盛夏に用いられる麻で織られた織物です。
麻織物が盛夏に向く理由は、
- 水の吸収がよく発散も素早い
- 肌触りがさらっとしていて気持ちがよい
- 丈夫で水洗いに耐える
という理由からです。
現代でこそ汗をかきやすい季節の織物ですが、
綿織物が登場するまでは、年中をとおして庶民は麻織物を着用していました。
上布/じょうふとは何?意味
上布(じょうふ)は、日本の古代から平安時代にかけて、麻織物の中でも最も上等なものを指す言葉です。
特に、女性の正装として用いられました。
上布は、麻の繊維を細かく裂いて紡いだ糸を用い、手間暇をかけて織り上げたもので、その質は非常に高かったとされています。
また、上布は繊維本来の白色で、染色されていないのが特徴です。
上布は、神事や祭りなどの重要な儀式で着用されることが多く、また、貴族の女性が結婚する際の婚礼衣装としても用いられました。
そのため、上布は社会的地位や権威を示す象徴ともなっていました。
この名は庶民の普段着が「中布」、「下布」と呼ばれていたことから、区別するためのようです。
なお、上布は現在ではほとんど作られていないとされていますが、その製法や文化的価値は高く評価されており、日本の重要無形文化財に指定されています。
上布の種類
上布の種類を紹介します。
- 「越後上布」:新潟県の特産品で、日本三大上布の一つとされています。越後上布は、麻の繊維を用いて手間暇をかけて織り上げられ、軽く透けるように薄い織物です。その質の高さから「布の中の宝石」とも称されます。
- 「能登上布」:石川県の特産品で、日本三大上布の一つとされています。能登上布は、麻の繊維を用いて手間暇をかけて織り上げられる蚊絣の織物。その質の高さから「布の中の宝石」とも称されます。
- 「近江上布」:滋賀県の愛知川付近でつくられる独特の皺のある織物です。
- 「八重山上布」:沖縄県八重山地方でつくられるこげ茶色の絣柄が特徴の織物です。
- 「宮古上布」:沖縄県宮古島でつくられる、軽くて光沢のある細かな模様が特徴の織物です。
以上が各上布の特徴です。それぞれ地域の風土や伝統を反映した織物で、その製法や文化的価値は高く評価されています。
それぞれの上布は、独特の風合いと耐久性があることから、着物の生地や帯、装飾品などに用いられます。
上布の作り方
上布の作り方は、非常に手間と時間がかかる工程で、以下のような作業が含まれます。
ここでは一般的な上布の製造過程を説明しますね。
地域や種類によっては異なる場合もあります。
- 麻の栽培:まずは麻を栽培します。麻は春に種をまき、夏に収穫します。
- 麻の収穫と乾燥:収穫した麻は乾燥させます。乾燥させることで、麻の茎から繊維を取り出すための準備をします。
- 繊維の取り出し:乾燥した麻の茎をたたいて繊維を取り出します。この工程を「打ち解す」といいます。
- 繊維の洗浄:取り出した繊維は、水で洗浄します。これにより、繊維が柔らかくなり、紡ぎやすくなります。
- 繊維の紡ぎ:洗浄した繊維を紡ぎます。これで糸ができます。
- 糸の染色:糸を染色します。ただし、上布は白色が基本で、染色されないことも多いです。
- 織り:染色した糸を織ります。これで布ができます。
- 仕上げ:織り上げた布を仕上げます。これにより、上布が完成します。
以上が一般的な上布の製造過程です。
この工程は非常に手間と時間がかかりますが、その結果上布は非常に高品質な布となります。
縮みとの違いを小千谷縮(おぢやちぢみ)でみると
◆麻の着物、小千谷縮(おぢやちぢみ)
麻織物でよく知られているものに小千谷縮(おぢやちぢみ)があります。
模様が横絣(よこがすり)で曲線なのが特徴です。
これは新潟県の小千谷地方でつくられますが、緯糸に強い撚りをかけることで皺(しぼ)をつくりだします。
これを「縮み」といい、肌触りが一層さらりとした感じになります。
手触りはかたいのですが、着心地は快適です。
蒸し暑い夏には最適でしょう。
着物以外の麻製品
◆麻の半幅帯(リバーシブル)
麻の帯もあります。
帯用の糸は着物用の糸よりも太い糸で、精錬を減らし荒くざっくりとした織り方にしてあります。
麻の帯は染も織りもありますが、織った帯は袋名古屋帯に仕立てます。
また麻の長襦袢もあります。
さらっとした肌触りで、盛夏のみならずひとえの季節に着用して涼しく過ごすことができます。
麻織物(あさおりもの)の上布とは何?種類/作り方/麻製品小千谷縮(着物用語)まとめ
木綿の着物が登場するまでの時代は、麻で織られた着物を着ていました。
現代では上布と言われる麻織物の上等な着物や帯が製造されています。
丈夫で風を通しやすいので、夏の衣装として利用されます。
◆夏に着る麻の着物の洗濯方法・家庭で、アイロンのあて方
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