◆広衿の長襦袢
着物の下に着る長襦袢(ながじゅばん)について、詳しく紹介します。
長襦袢の主な役割は「着物の衿の汚れ防止」と「下着と着物との調整」です。
長襦袢も衣類ですから、着物と同じように季節によって着分けが必要です。
といっても、そんなに難しい話ではありませんよ。
ここでは、
- 長襦袢とは
- その役割や種類
- 肌襦袢との違い
- 夏用・秋冬用の時期や素材
について順をおってお伝えします。
長襦袢とは何ですか?その役割
◆長襦袢と腰ひも・伊達衿・衿芯
長襦袢(ながじゅばん)とは・何のため?
長襦袢は、着物を着る際の基本的な下着の一つです。
長襦袢は、着物を美しく、そして長持ちさせるために不可欠なアイテムといえます。
素材やデザインが異なる様々な長襦袢があり、それぞれのシーンや季節、着物の種類に合わせて選ぶことが一般的です。
長襦袢の役割
長襦袢には着物を保護する、体の線を美しく見せる、装飾の三つの役割があります。
- 保護:長襦袢は、着物を汗などの汚れから守る役割があります。直接肌に触れることで、着物の寿命を延ばす助けとなります。
- 形状の保持:良いシルエットを出すため、長襦袢は着物の下に着ることで、体の線を美しく見せる役割も果たします。
- 装飾:一部の長襦袢は、襟元や袖から少し見せることで、着物の装いをより豊かに見せる助けとなります。
長襦袢の色の種類
◆柄物の長襦袢
長襦袢の種類は、基本が白で、色物も多数あります。
- 白襦袢:最も基本的で、多くの着物に合わせやすい。特に正式な場では、白襦袢が好まれます。
- 色襦袢:色がついているもので、カジュアルな場や季節に合わせて選ばれます。柄入りなど、デザインのバリエーションが豊富です。
長襦袢の選び方のポイント
着物の種類や場面、季節によって、また体型によって選ぶというのがポイントです。
◆着物の種類や場面:正式な場では白襦袢、カジュアルな場では色襦袢を選ぶことが多いです。
◆季節:季節に応じて素材を選ぶことで、快適に過ごすことができます。
◆体型:シルエットを美しく見せるために、自分の体型に合ったものを選ぶことが大切。
長襦袢と肌襦袢の違い
◆肌襦袢・肌着
ここでよく質問される、長襦袢と肌襦袢の違いを簡単にまとめておきます。
肌襦袢は一番下の層で、主に汗を吸収し肌を保護する役目があり、その上に長襦袢を着るというのが一般的な着方です。
長襦袢(ながじゅばん)の特徴まとめ
- 着物の直下に着るもので、袖があります。
- 着物のシルエットや見た目を整える役割があります。
- さまざまなデザインや素材があり、季節や着物の種類によって選ばれます。
肌襦袢(はだじゅばん)の特徴まとめ
- さらに一番下、肌に直接触れる部分に着る下着です。
- 主な役割は、汗を吸収し、肌を保護すること。
- 素材は綿やシルクなど、肌触りの良いものが使用されます。
長襦袢の形は二種類あります
女性の長襦袢は形状でみると二種類あります。
それは仕立て方による違いで、
- 「関東仕立て」
- 「関西仕立て」
どこで見分けがつくかというと、長着(着物)でいう「おくみ」のところです。
長じゅばんだと幅8センチほどです。
<おくみの違いによる見分け方>
- 「関東仕立て」には「おくみ」の部分がなく、「通し衿仕立て」とも呼ばれる仕立て方
- 「関西仕立て」には「おくみ」の部分があって、「別衿仕立て」とも呼ばれる仕立て方
「関東仕立て」の長襦袢の特徴
「関東仕立て」の長襦袢は、おくみの部分がなく半幅の地衿が裾まで続きます。
普通体型の方なら問題なく着用できますが、ふくよかな方には適しません。
普通体型でも胸が大きい・腰回りが大きいという方は、着こなしにくいかと思います。
「関東仕立て」の方が標準型とされていましたが、現代ではこちらを選択する人は少ないようです。
「関西仕立て」の長襦袢の特徴
◆広衿の関西仕立て長じゅばん
この写真は「広衿」の「関西仕立て」の長襦袢です。
「関西仕立て」の長襦袢は、おくみの部分があるので身幅が「関東仕立て」より広いです。
前合わせがゆったりするので着やすく、どんな体型の人にも合う仕立て方です。
現代では「関西仕立て」を選択する人の方が多いでしょう。
<体型による着分け>
- 「関東仕立て」は身幅が狭く、細身~普通体型の方向き
- 「関西仕立て」は身幅は広め、普通~ふくよかな方向き
次に衿について、衿には二種類あります。
長襦袢の衿は二種類あります
長襦袢の衿は「広衿」と「バチ衿」の二種類あります。
基本、礼装には広衿の長襦袢を、普段用にはバチ衿の長襦袢を合わせます。
ですが、現代では扱いやすいことから礼装用でもバチ衿仕立てを利用することがあります。
長襦袢・夏用とそれ以外
◆夏用着物と夏用長じゅばんの着姿
さて長襦袢も着物と同様、季節によって着分けます。
暑いときは涼しい素材、寒いときは温かい素材、これは当然ですね。
また、裏地のあるなしなどでも、温度調節をします。
長襦袢を着分ける目安
着分ける目安としては、夏向きとそれ以外の季節で大きく分かれます。
<絽の長襦袢を着る時期>夏物で「絽」の長襦袢を着る時期は、6月・7月・8月・9月
<紗・麻の長襦袢を着る時期>
夏物で「紗」・「麻」の長襦袢を着る時期は、7月・8月
<裏地付きの長襦袢を着る時期>裏地付きの長襦袢を着る時期は、11月から4月
※カジュアルな着物の場合は、この時期にも裏地なしをよく利用します。
<裏地なしの長襦袢を着る時期>
裏地なしのひとえの長襦袢を着る時期は、5月・10月
月単位で紹介しましたが、特に季節の変わり目は、気温や体調に合わせて、ご自身にあった素材を選んでくださいね。
裏地付き長襦袢は減少している
裏地付きの長襦袢は、保温力があるので冬にふさわしいものです。
ですが現代では空調設備が整っていることもあり、仕立てる人は減っています。
着物を頻繁に利用しない方は、裏地付きの長襦袢を持たなくてもよいかもしれません。
裾さばきと着物の保護のために
長襦袢には最初に「下着と着物との調整」という役目があるといいました。
その「調整」が「着物の裾さばきをよくする」というものです。
長襦袢の裾さばきがよいと、歩きやすく着物が傷みにくいです。
上等な着物には、生地を守るために長襦袢の裾丈は着物の裾丈になるべく近い長さにするとよいです。
長襦袢とは/役割と種類/肌襦袢との違い/夏用/季節による着分け・まとめ
長じゅばんの役割は「着物の衿の汚れ防止」「下着と着物との調整」「おしゃれの一要素」。
長襦袢の種類は、「関東仕立て」と「関西仕立て」の二種類。
現代では「関西仕立て」の方が主流。
季節の変わり目の長じゅばん選びは、気温や体調で判断を。
着物を着る機会が少ない人は、バチ衿で関西仕立ての長じゅばんをひとえで仕立てるのが合理的でしょう。
上等な着物をと合わせて仕立てる場合は、着物の裾を守るため、裾丈は着物丈に近い長さに。
<関連ページ紹介>
◆広衿・バチ衿・棒衿・着物の衿の違いと選び方・長襦袢はどっちがいい?
◆半衿とは・振り袖/訪問着/留袖/塩瀬の半衿とは
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