現代では、女性の和服の帯の主流は「名古屋帯」でしょう。
名古屋帯が登場するまでは「袋帯」を結んでいました。
重たい「袋帯」をしていた時代は、「女性は家庭を守るべき、良妻賢母であるべき」とされていた時代でした。
それが「名古屋帯」という合理的な帯に変わることで、女性の社会進出がすすんでいくことになりました。
ここでは袋帯から名古屋帯への帯の歴史にふれていきます。
名古屋帯を考案した越原春子さん
「名古屋帯」は袋帯と違って、「簡単に着物の帯が締められて動きやすい」と評判を呼びました。
帯を締めることは、それまでは人に手伝ってもらわなければならないほど時間のかかるものでした。
それが、胴に巻く部分を半分の幅にしたことで、支度にかかる時間が非常に短くなりました。
また、帯の布地もずいぶん減らせました。
この帯を考案したのは、越原春子さんという人です。
越原春子さんは夫の和(やまと)さんと、名古屋女学校(名古屋女子大の前身)を創った教育者です。
越原さんが多忙な中で考案したもの
創設のころの忙しい時期に、この帯を考案されました。
授業や生徒募集に追われ、帯を締める時間も惜しいほどの忙しさだったころです。
もっと簡単に帯が締められないものか?と思案されたのでしょう。
これまでのほぼ半分の手間で済む帯は、誕生の地名古屋の名をとって、「名古屋帯」として広まることになりました。
名古屋帯で時間に余裕・自立の考え方も
◆アンティークの名古屋帯
名古屋帯が考案されたのは、大正7~8年ごろです。
その後全国に瞬く間に広がったそうですが、それだけ名古屋帯のブームがすごかったということです。
それまで明治、大正と続く時代は、「女性は家を守るもの、良い妻や母であるべき」とされていました。
女性の生き方は、夫に従い、子供や家庭を守り、地域の中で終えるもので、口答えなどできない風潮がありました。
もちろん自立や社会進出なんていう言葉は、いっさい口にできないような時代だったでしょう。
当時女学校に通う女性は、裕福な限られた女性だけです。
そんな時代にあって、名古屋帯の登場は、身支度が早くすみ、重さも半分ほどになって身軽になれます。
名古屋帯に変わることで、女性は行動しやすく、家事などの仕事がしやすくなりました。
名古屋帯を利用するようになったことで、学んだり好きな仕事に就く人を増やすことにもつながっていきます。
なにしろ簡易になった名古屋帯に、ほとんどすべての女性が変えていったのですから。
日々の身支度を簡略化できた女性は、時間の余裕ができるようになったのです。
そして女性の考え方も徐々に変えていくことになり、自立・社会進出を始める女性が増えていくきっかけになりました。
女性しかできない仕事で貢献を
名古屋帯を考案した越原春子さんは、運営する女学校でも合理的な考えをいかしていました。
のびのびと女子生徒が勉学やスポーツに励めるようにと、通学服を名古屋で初めて洋服に変え、運動着のデザインもてがけました。
戦後になって女性初の国会議員になり、働く女性の育児支援にも尽力されたそうです。
女性の力を社会に生かしたいという想いを、生涯貫かれた人でした。
ただ、彼女の求める女性は、「女性が男性と肩を並べるものではなく、女性にしかできない仕事で社会に貢献してほしい」というものだったそうです。
合理的な考えで着物と付き合う
今でこそ名古屋帯を当たり前に締めていますが、登場した当時は、
「こんなに簡単で軽くていいの!?」という嬉しさと驚きで歓迎されました。
そんな簡単に結べる名古屋帯。
昔は親の着替える様子を、見様見真似で覚えていったので、簡単にできるものだったはずです。
しかし日常に着物を着なくなってからは、親に教えてもらうことさえできません。
着物の着方を覚えるのは、今では「着付け教室に行く」のが当たり前になりました。
合理的に着たいは時代の流れ
慣れてしまえば名古屋帯を結ぶのは難しくありませんが、それでも「もっと簡単に帯が結べないか」という声もよく聞きます。
現代では、「もっと簡単に、もっと楽に」が求められているのかもしれません。
確かに洋服の着方に比べたら、面倒だったり時間がかかると感じますものね。
その要望に応えるような「作り帯」や「切らずに結べる帯」なども登場しています。
和服 着物の帯/袋帯から名古屋帯へ/合理化と時代による変化・まとめ
袋帯から名古屋帯へと変わったのは、大正の中期から。
その後は名古屋帯が主流になりました。
名古屋帯になったことで、生地の減少、時間の短縮、余裕の時間を生み出しました。
現代はお太鼓を結ぶのさえ、大変な想いをしている人が増えています。
さらに合理的な考え方で、結ばない「付け帯」や「切らずに結べる帯」などが登場して、帯の合理化はより進んでいます。
着付けが面倒で・・・という人は、帯は「付け帯」を選ぶとよいでね
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