「伊勢型紙」は主に江戸小紋を染めるのに使う型紙で、三重県の伊勢地方(鈴鹿市)で作られています。
伊勢型紙の歴史は1000年以上前で、
着物の文様になくてはならないものとして、武士や町人に重宝がられてきました。
伊勢型紙は、美濃和紙を三枚重ねて、柿渋で貼りあわせて強度をもたせ、
錐など数種類の彫り道具を用いて、非常に細かい連続模様を彫ります。
江戸小紋柄が有名
着物の文様としてよく知られているのは、江戸小紋柄です。
そのうち、鮫小紋・通し小紋・行儀小紋などをはじめ、
千筋(せんすじ)・万筋(まんすじ)などの、非常に細かいたて縞の模様が品格があり有名です。
型地紙の工程について
型地紙の製作工程は大きくこの四つです。
- 法造り(ほづくり)
- 紙つけ
- 乾燥
- 室干し(むろがらし)
200枚から500枚の和紙を重ね規格寸法に裁断し、
3枚の和紙を紙の目に従ってタテ・ヨコ・タテとベニヤ状に柿渋で張り合わせる。
それを桧の張板にはり天日で干す。
乾燥した紙を燻煙室へ入れ、約1週間いぶし続けることで伸縮しにくいコゲ茶色の型地紙に。
さらにもう一度柿渋に浸し天日乾燥→室干しの後、表面の点検という工程を経て型地紙になる。
この間準備もふくめて全工程に2~3ヶ月かかる行程です。
伊勢型紙の彫刻技法
◆江戸小紋柄の例(伊勢型紙による染め)
型紙はたて20cm横40cmの大きさの型紙に、びっしりと小刀で模様を彫っていきます。
技法は四種類。
- 縞彫り
- 突彫り
- 道具彫り
- 錐彫り
これらの彫りを駆使して、繊細でち密な柄ができあがります。
基本の型紙の大きさのものを彫るのに、熟練した彫り師でも3週間から60日もの期間がかかります。
染めの技術も熟練の技
出来上がった型紙を反物におき、刷毛で色を染めていきます。
どの線もぶれがなく、そしてどこにも途切れるところがないように、連続していなくてはなりませんので、
染めの技術にも熟練を要します。
伝統工芸品(用具)の指定を受ける
型紙を作るには高度な技術と根気や忍耐が必要になります。
昭和58年4月には、通商産業大臣より伝統的工芸品(用具)の指定をうけました。
今でも江戸小紋柄は、お茶の世界でも着物の世界でも、なくてはならない伝統的な美しい柄。
伊勢型紙の技術を継承している人は、減少傾向にあるそうです。
伊勢型紙資料館
実物は「伊勢型紙資料館」で見ることができます。
江戸時代末期の建物で白子屈指の型紙問屋であった「寺尾斎兵衛家の住宅」を修復した、「伊勢型紙資料館」が三重県鈴鹿市にあります。(平成9年開館)
寺尾家は江戸時代から伊勢型紙の生産から販売までを行い、行商範囲は東北地方から関東一円にも及んでいました。
寺尾家住宅は、型紙関係の商家としてまた町家建築の代表例として、市史跡に指定されています。
この由緒ある建物は、寺尾正一氏から寄贈を受けたものです。
(伊勢型紙資料館HPより)
型紙資料などが収蔵・展示されています。
<伊勢型紙資料館>
- 住所:三重県鈴鹿市白子本町21-30
- 利用時間:見学は10時~16時
- 休館日:月曜日、火曜日、第3水曜日(ただし、月曜日のみ休日の場合は開館)、年末年始
- 入館料:無料
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