◆丸組の帯締めの例
数年前放送されていた、明治時代の女性実業家広岡浅子の生涯を描いたドラマ「あさが来た」。
「あさが来た」の時代は明治27(1894)年、日清戦争が起こり軍需景気で明治の日本は沸いている頃です。
あさは銀行の事業も炭鉱の事業も軌道にのせ、婦人雑誌や新聞に取り上げられる名士になり、
女子教育にも力を入れ、女子大設立へと突き進んでいる時代です。
この頃になると、あさやあさのお義母さんの姿に変化がおこります。
それは帯締めをしていることです。
それ以前の衣装では帯を広い幅で締めているのですが、帯締めはしていません。
帯締めとはいっても現代よく使われている組紐の帯締めではなく、布の帯締め、つまり丸ぐけの帯締めです。
明治20年代から30年代のころは、まだ女性の帯締めは丸ぐけのものがほとんど。
◆丸ぐけの帯締めの例
組紐の帯締めが先進的な女性によってようやく使われ始めた頃です。
帯締めの歴史・豆知識
帯締めの始まりは江戸末期
そもそも「帯締め」の始まりは文化年間(1804年~1817年・江戸末期)です。
当時人気のあった歌舞伎役者が衣装の着崩れを防止するために、帯の上に紐を締めたことがその始まりとされています。
その姿がカッコ良かったのでしょうね。
それを真似るのが女性の間で流行し、「これは便利だわ」ということから「帯締め」が庶民にも定着していきます。
この時代は細い棒状にした綿を、布でくるんで縫いとめたものが帯締めです。
これが後に「丸ぐけ帯締め」と呼ばれます。
◆丸ぐけ帯締めの例
丸ぐけから組紐へ
はじめは丸ぐけの帯締めしかありませんでした。
組紐の帯締めが使われるようになるのはもっと後のこと。
明治9年(1876年)の「廃刀令」が関係しています。
刀を持たなくなったことで、刀の下緒(さげお)に使われていた組紐がいらなくなりました。
そのため組紐職人の仕事が減り、技術を帯締めの組紐に生かすようになったという経過があります。
帯締めとして組紐を使い出したのが明治の中期ごろ。
様々な組紐ができ広まるにつれて、丸ぐけのものと併用され、次第に組紐の帯締めが主流となっていきます。
現代は組紐の帯締めが主流、その理由
現代の帯締めは大きくわけてこの二種類です。
- 「丸ぐけの帯締め」⇒綿などを入れた帯締め
- 「組紐の帯締め」
そして組紐の帯締めには、
丸組みのものと
◆丸組みの帯締めの例
平組みのもの
◆平組帯締めの例
があります。
帯締めには帯を留めておく力がかかりますから、布よりは組紐の方が強度があることでしょう。
組み方には種類も多く変化にとんだものがあり、装飾性があります。
組紐が主流になったのには、このように丸ぐけ紐よりも良い点が多いためと思われます。
丸ぐけ帯締めを使う場面
今、丸ぐけの紐を使うのは、花嫁さんの帯締めと黒留袖の帯締めくらいです。
それさえも組紐の方が圧倒的に多くなっていると思います。
現代はファッションとしての着物に丸ぐけ帯締めを
現代は組紐が主流ですが、大正時代の着こなしを好む人などが丸ぐけ帯締めを合わせています。
現代はファッションとしての着物を自由に楽しみ、どの帯締めもファッションの一部として着こなしを楽しめます。
帯締めの種類・丸ぐけと組みひもにみる帯締めの歴史まとめ
明治20~30年代の時代になり、女性の帯を留める「丸ぐけ帯締め」が登場する。
組紐の帯締めがこのころから使われだすが、一般に広まるのは大正から昭和初期。
組紐も丸ぐけも、現代はファッションとして自由に楽しめる。
丸ぐけの帯締めは自作もできるので、興味のある人はお試しを。
◆自作した丸ぐけの帯締めで紬着物のコーディネート
締め方をアレンジできるので、個人的には丸組み帯締めは大好きです。
綿でなく毛糸を入れるカンタンな方法で紹介しています。
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