ひとえの着物の袖の幅を広くお直しする方法を紹介します。
最初に「袖幅」の確認をします。
◆袖付近の各部の名称
着物の袖幅を広くするには限界があります。
そのため幅出しができるかどうかを確認して、作業を始めましょう。
では具体的に説明します。
袖幅を狭くしたいときも、基本やり方は同じですので参考にしてくださいね。
袖幅を広くする方法・縫い代側を出す
ひとえの着物の袖幅を広くするには、袖付側の袖の縫い代を出す必要があります。
つまり縫い代の分だけしか、袖幅を広げることはできません。
(袖口の方は三つ折りで仕上げてあるので、幅はだせません)
まず袖幅を出せるかどかを考える
そこでまずは、袖幅を出せるかどうかを考えます。
着物用の生地は幅が、36~7センチくらいのものが多いです。
中には幅38センチほどの幅のものもあるので、縫い代が多いこともあります。
実際どれだけ幅が出せるのかを判断します。
<実際に幅出しできる長さ>
縫い代の長さ(幅)-1センチ=出せる長さ
(正確にはあと2ミリ狭くなります)
※ 例 縫い代が4センチある場合は3センチだせるということです。
縫い代が2センチの場合は1センチ出せます。
ですが1センチ出すだけにお直しをするかどうか、よく考えてみてくださいね。
縫い代や生地に変色はない?
そしてもう一つ判断しなくてはならないことがあります。
それは縫い代と表生地の色が一緒かどうかです。
色は変色していませんか?
風合いが変化していませんか?
縫い代が表生地になるので、よく見て問題ないことを確かめましょう。
ひとえ着物の袖幅出しに必要なもの
<お直しに必要なもの>
- 縫い糸
- 縫い針
- 糸切ばさみ
- アイロン
- あて布
- 待ち針
袖幅の出し方・手順
まず袖付の長さを測っておきます。
◆袖付けの長さを測る
袖付けの長さは、肩山から袖がつけてある一番下の位置までです。
この例では、袖付は22センチでした。
袖付けのすぐ下のところをめくってみて、袖の縫い代をはかってみます。
◆袖の縫い代を測る
縫い代は4.3センチあります。
(最低1センチ残すので3.3センチ幅をだせます)
左右の袖を間違わないために印付けを
最初に左右の袖を間違わないよう、目印をつけておきます。
袖を外す前に、左右わかるように印をつけておきます。
(私は赤い糸で背中側に糸印をつけています)
左右の見極めは、袖底の縫い代でわかります。
袖底の縫い代は、前身ごろに向かって倒してあります(基本)。
袖と身頃をはずす
◆袖を身ごろからはずす
どれだけ袖幅を出すかを決めたら、袖と身頃をはずします。
折り目(折り山)を消す
ほどいたら折り山を消しましょう。
袖を裏側にして、当て布をしてアイロンをあて、折山を消します。
◆筋の上にぬらした糸を置いて
ドライでは消えない場合は、霧吹きをして筋を消します。
それでも消えないときは、裏側から筋の上に筋に沿って、濡らした糸をおいてその上にアイロンをあててください。
濡らす糸は木綿の白色の太目のものを一本か二本で。
何度か行うと、筋が消えると思います。
縫い代を倒す
◆縫い代1センチにして折る
筋がとれたら、新たな縫い代をアイロンをあてて倒します。
ここでは最大の幅出しのため、縫い代を1センチにしました。
これで袖幅を3.3センチだせます。
袖と身頃をつなげる
このあとは袖と身頃をつなげます。
袖の肩山から22センチ(袖付けの位置)に印をつけます。
身頃にも同じように、肩山から22センチのところに印をつけます。
袖の表と身頃の表を合わせ待ち針をうっていきます。
このとき袖の裏側が手前に見えているようにすると、やりやすいと思います。
◆袖のつけ方の図
この図の一番上を参考にして、肩山の1から6の順に待ち針をうっていきます。
- それぞれ縫い代の線に、肩山に待ち針をうつ、1です
- 肩山から左右4~5センチの位置、2にも待ち針をうつ
- 22センチのところ(袖付止まり)にも、待ち針をうつ、3です
- そして4、5、6と順に待ち針をうって、袖と身頃を合わせる
◆袖付けのため待ち針をすべてうったところ
写真のようになります。
肩山が白い色です。
このとき、図の一番下の列のように「縫う調子」、つり合いをとるのが最良ですが、そこまで難しいかもしれないので、まずは袖と身頃を合わせるだけでもいいです。
袖は動きが激しいのでしっかりと取り付けたいところです。
袖をしっかり付けるためのひと手間
そこで次のような作業を行います。
これがちょっと難しいですが、頑張ってください。
- 袖山のところの身頃側の縫い代の待ち針をいったんはずして、縫い代線から8ミリのところに針を出しなおして、8ミリの幅をつまんで半分にして針を刺しなおしてください。
- この作業をその両端の位置の待ち針でも行います。
- さらに袖付止まりから数センチ入ったところまでは3ミリの幅で針を出し、つまんで半分の幅にして針をさしなおします。
- その間は6ミリの幅で針を出し、つまんで半分の幅にして針をさしなおします。
身頃の裏側に小さい針目が出ていて、写真のようになります。
袖を縫い付ける
袖を縫い付けます。
◆袖付けの図
縫い方は、図の中央にあります。
最初半返し縫いを4~5センチ、並縫い(普通に縫う)をしていき、肩山の左右4~5センチを半返し縫いで縫います。
こうすると、しっかりと袖と身頃が縫い合わさります。
ここまでできたらアイロンを縫い目にあててください。
そして折りきせ2ミリで袖の方に折って、アイロンをあててください。
やや引っ張りながらやるとよいです。
(上の画像のように縫ったところより袖側を倒してアイロンをあてます。)
表に返して、折りきせがただしくできているか確認し、よければアイロンを表から当ててください。
縫い代の始末をする
新たにできた袖の縫い代の端を身ごろに留め、始末します。
◆新たにできた縫い代を身ごろにとめる
この例では、わかりやすいように白い糸を使っています。
「ひとつ目落とし」という和裁の縫い方ですが、表側に出る針目を2~3ミリにして縫いとめてもよいです。
◆表側の針目2ミリ
表側にはこんな風に、糸が小さい針目で見える縫い方です。
身頃の縫い代も同じように身頃にとめてください。
◆袖幅33.8センチに
表側にして引きつれなどないか確認して、袖の幅出しは完成です!
袖幅は33.8センチになりました。
これで終了ですが、袖付の補強のため、「かんぬき止め」をしておいてもよいです。
「かんぬき止め」の方法は、こちらを参考にしてください。
https://kimono-story.com/273.html
袖幅を広くするお直し(ひとえ着物で)詳しく解説/袖の付け方も!まとめ
袖幅を出す(広くする)方法をお伝えしました。
幅をだす長さの確認、生地の変色がなことを確かめて行ってください。
袖の付け方は難しいかもしれませんが、頑張ってくださいね。
袖の幅を狭くしたいときも、同じように袖を外して袖幅を好みの幅に変えてから、身頃に取り付けていきます。
<折りきせについて>
折りきせというのは、和裁の特徴で、縫い目に2~3ミリ生地をかぶせて、縫い目を保護するためのものです。
袖付けをはじめ、背縫い、おくみ、身頃、衿などにほどこしてあります。
<関連ページ紹介>
◆肩幅で裄(ゆき)の直しをしたいとき
◆袖丈直しの方法・丸みの変更
◆着物の身幅のお直し方法・許容範囲・着こなしで乗り越えるには
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