着物を自分用に仕立ててもらうことを「誂(あつら)える」といいます。
洋服の「オーダーメイド」と同じ意味合いです。
とはいえ着物の場合は、洋服のように細かくサイズを測るわけではありません。
せっかく誂えるのであれば、失敗のないよう自分にぴったりのものを仕立ててくださいね。
せっかく誂えたのに自分にあっていない!失敗した!という例をいくつか知っているので参考になさってください。
- 着物の誂えの流れ
- 失敗しないために
- 誂えの失敗例
についてお話しますね。
着物の誂え・採寸について
着物を仕立てるにあたっては、まず「採寸」をします。
「採寸」といってもで洋服のように細かく測るわけではありません。
- 「裄(ゆき)」
- 「身丈」
- 「身幅」
の三か所を測るだけというパターンが多いです。
採寸する三か所について詳しくお話します。
裄(ゆき)とは
「裄(ゆき)」というのは、首の付け根の中央を通って、手首から手首までの長さです。
真っ直ぐに立って、脇を30度くらいの角度にして測ります。
身丈(みたけ)とは
「身丈」は着物の丈のことで、ほぼ身長と同じ長さです。
浴衣の場合は短めに着るので、身丈は身長より数センチ短くすることが多く、
礼装の着物の場合は、裾を引きずるくらいの長さを想定して、身長より5ほど長めに仕立てるのが一般的です。
身幅とは
身幅は胴回りのことで、通常はヒップの一番でているところで測ります。
そのほかの採寸か所
上記の三か所に加えて、バストやウエストサイズを測ることもあります。
普通体型の方の場合は、「裄」「身丈」「身幅」の採寸だけで終わることが多いです。
呉服屋さん着物やさんの常識
採寸も仕立てもやってくれるところなら、ご本人を目の前にしているので体型の特徴があれば、仕立ての参考にしてもらえます。
しかしながら採寸するところと仕立てるところが違う場合があります。
呉服屋さんで採寸して、仕立ては仕立て専門の和裁士さんに任せるような場合です。
サイズを測った人が、ご本人の体型の特徴などをきちんと伝えてもらえれば問題ありません。
ですが、呉服の常識として、「標準の仕立て方=女並」がまだ当たり前というところもあります。
三サイズを測っただけで「標準の仕立て方=女並」にすると、普通体型の人には合うのですが、そうでない人には合わない場合もあります。
「女並」とは、女性の標準寸法での仕立て方で、
「前幅23センチ、後幅28.5センチ」で仕立てる寸法です。
この「女並」というサイズは、ちょっとふくよかな方は、前あわせが少なすぎのサイズです。
昔はほとんどの女性はこのサイズで仕立てたとも聞きますが、
現代の女性は昭和の初期より、体型がずいぶんよくなっているので合わない人も多くなりました。
体型に特徴があれば恥ずかしがらず伝えましょう
もしあなたが、ご自身の体型で気になるところがあれば必ず伝えておいた方がよいです。例えば、
- すごく痩せている
- お腹周りの方がヒップ周りより大きい
- 首がとても太いまたは細い
- 猫背である
など気になることがあれば、必ず採寸のときに伝えましょう。着物の仕立ては、基本の割り出し方があり、そこから体型によって変更を加えて仕立てます
。
体型のことは内緒にしたいですが、自分から言わないと、ぴったりの出来上がりにならないこともあるからです。
着物の誂え失敗事例・浴衣
以前私の着付け教室にお越しいただいた方で、浴衣の着付けを習うにあたって浴衣を誂えた方がありました。
呉服屋で採寸をしたにもかかわらず、できあがった浴衣が小さくて困惑されていました。
誂えたその浴衣は、身幅が狭すぎて、座るにしても歩くにしても前身ごろがすぐはだけてしまいます。
せっかくお気にいりのデザイン浴衣生地を見つけたので、その呉服屋で注文したのです。
なぜそんなことになったのか。。。
その女性は身長160センチほど。
体全体がかなりボリュームのある方でした。
採寸の詳しい事情は分かりませんが、いわゆる普通サイズで仕立てあがったようです。
浴衣であっても、裄がかなり短めなのも気になりました。
そのためか、着付けの練習にも全く身がはいりません。
その方にお伝えしたこと
誂えたばかりの浴衣だったので、直しをされるようおすすめました。
身幅だけはなんとしても直さないとムリがあります。
身幅の縫い代の分量を変えれば、身幅を広くだせるのです。
裄についても縫い代を見てみると余裕があるので、裄も長くしてもらうようお伝えしました。
ご本人に合わなかったのは、サイズを測ったものの、仕立てはそのサイズだけを参考に仕立てたということでしょう。
着物の誂え失敗事例・訪問着
この事例は失敗ではなく、呉服屋さんへのがっかりが正しいですが。。。
その方は以前から利用している呉服屋さんに、久しぶりに誂えに行きました。
身長155センチくらいのやや細めの体型です。
出来上がった着物は、訪問着。
いざ着てみようとしたら、身丈がずらーっと長いのでびっくりです。
身丈が長いのは、おはしょりを多くとることで、なんとか着られます。
が、それにしても長い!測ってみたらいつもの丈より20センチほど長いのです。
将来ご自身より10センチ長身の娘さんに譲るとしても、長いです。
仕立てを頼まなかった数年の間に、店主さんか和裁士さんが変わったのでしょうか?
今までお付き合いのあった呉服屋さんでも、こんなことがあるのです。
これは注文した人に全く責任のないことで、困惑しますね。
着物の誂えでの失敗しないために
そこで、誂えで失敗のないよう、仕立てを頼むときに以下の点を確認しておくとよいでしょう。
- 袖が手首のどこまでくるのかを確認しましょう(洋服より短めです)
- ふくよかな方は、バストや腹部のサイズも参考にしてもらいましょう
- 反物が余るならそれをどうするのか
1の袖の長さについて、
着物の袖は洋風より短めで、手首が見える程度が普通です。
できあがってから短いことに驚いても、直せないこともあるので、あらかじめ袖がどこまでの長さか知っておくと安心です。
2のふくよかな方への注意は、
身頃の幅をどうするかで、普通サイズより大きくすることが可能なので、ぴったりの着物を仕立ててもらうためにも、バストや腹部のサイズを伝えておくとよいです。
3の反物のあまりについて、
着物ができあがったあと、反物(生地)が余った場合は、返してもらうか処分してもいいかを伝えておきましょう。
ハギレであっても活用方法を教えてくれることもあります(和装小物にする)。
ネットで誂え注文ができるお店での注意点
近年ではインターネットを通じて申し込める呉服店や仕立て屋がありますね。
申し込みの際は、サイズを詳細に記入するようになっています。
近年着物の「標準寸法が改訂」されています。
現代の女性にあった標準寸法を表すもので、女性の場合身長150センチから5センチきざみで170センチまで、身丈、袖丈、袖口などの身長に合わせた寸法表ができています。
分かりやすい説明のお店を選んで、ベストなサイズのものを仕立ててもらってください。
なお立ったり座ったりの動作が頻繁な方は、前の身頃の幅をやや広くとると動作がしやすくなり、前あわせが開きにくくなりますので、その旨伝えるといいですよ。
着物をあつらえる前に、サイズの測り方/お任せしたのに失敗!した例・まとめ
着物をあつらえるときは、基本の採寸だけでなく体型の特徴について必ず伝えましょう。
初めてあつらえる場合は、袖が手首のどこまでくるのか、反物が余るなら余分をどうするのかも聞いておきましょう。
近年着物の標準寸法が変わりましたので、問題やトラブルはなくなっていくと思いますが、呉服屋さんの経験値と初めての方の予想とは違うこともあります。
疑問点は必ず解消して、納得して誂えてくださいね。
<着物の基本は「裄(ゆき)」のサイズ>
着物の基本は「裄」のサイズです。
これから着物を増やしていこうとお考えなら、自分の裄のサイズを慎重に決めてくださいね。
なぜかというと、着物の裄を基準にして、長じゅばんの裄サイズ、羽織やコートの裄サイズが決まるからです。
着物の裄があまり長いと、羽織やコートを仕立てられなくなることがあります。
和服の生地は「反物」という生地のため幅に制約があるからです。
◆着物を誂える、値段や相場は?海外仕立てと国内仕立て
◆着物の仕立て方、反物からの作り方をわかりやすく、和裁の疑問がなくなる
コメント
度々 こちらを伺い、知識を広げております。
裄の問題は本当にその通りだなと痛感したことがありました。
私、裄が72cmほどあり、呉服店で何回か近い裄サイズで長着を仕立てていただいておりました。しかし、先日、羽織を仕立てる際に袖幅が出ないことが判りました。
普段着としての長着であれば、少し短め(69cm)で仕立てていれば良かったのかな?と思いました。(たぶん羽織は袖部分に割り入れ仕立てになりそうです)
裄(腕が長い)人はやはり反物幅の広いものを先に指定したほうが良さそうですね。