着物を仕立てるには、どれくらいのお値段がするのでしょう?
これからの着物ライフを考えるにあたって、ざっくり知っておきたいお仕立て(おあつらえ)の値段・相場についてお伝えします。
着物の仕立てにかかる主なものは、
- 生地(反物)代
- 裏地代
- 仕立て代
- 加工代
- その他の加工代
では、生地(反物)から着物を仕立てるにあたり、具体的に見ていきましょう。
着物の仕立ては誂え、オーダーメイド
着物を誂(あつら)えるとは「自分の好みのままに注文して作らせる」ことです。
こうしたい、ああしたいという注文をそのまま受けてもらい、仕立ててもらうわけなので、
自分にピッタリのサイズになるのはもちろんです。
いわゆるオーダーメイドということになります。
ピッタリの着物は、着付けも素早くできますしとにかく着心地がよいです。
「反物」(着物用の生地)から仕立ててもらうため、お値段や出来上がりまでの時間はいろいろあります。
※着物の生地は反物といいます。
幅38cm長さ12mほどの生地を芯に巻いた状態です
反物から仕立てる着物の値段
反物を選び、着物を作るのに、お値段はいくらかかるでしょう。
それは以下の価格の積み重ねで決まります。
- 反物代
- 裏地代(胴裏と八掛)
- 仕立て代
- 加工代(防水・撥水加工 ※任意)
- その他の加工代(湯のしなど生地により必要になるものがある)
では順にみていきますね。
着物の反物代(生地代)
着物の生地は「反物」といい、長さ12~3mの生地を丸めてあります。
染めあがっているものと白生地のものがあり、
染めあがっているものは、2万円くらいから(白生地は1万円くらいから)。
裏地代(胴裏代・八掛代)
◆着物の裏生地の八掛
着物に必要な裏地は「胴裏(どううら)」と「八掛(はっかけ)」です。
胴裏は胴部分と袖の裏地で、白色の薄い生地です。
5,000円くらいから。
八掛は市販のもので選ぶことが多いですが、新たに染めるということであればその費用がかかります。
5,000円くらいから。
仕立て代
仕立て代は、和裁士など仕立てにかかる人件費。
技術力によって変化することもあります。
仕立て代は「着物の格」によって値段が決められていることが多いです。
1.5万円から5万円くらい。
※着物の格とは、振袖や留袖は格が高く、小紋や木綿の着物は格が低いという意味です。もちろん格が高い着物の方が難易度があがります。
加工代(防水・撥水・防汚)
雨や汚れから着物を守るための加工代金です。
生地本来の風合いや光沢・通気性を保ったまま、着物をシミや汚れなどから守ることができるものです。
パールトーン加工、ガード加工、スコッチガードなどの名称があります。
主に着物に加工しますが、帯や長じゅばんに加工することもできます。
また白っぽい生地や白い胴裏に黄変防止として施されるホワイトガード加工というものもあります。
説明をよく聞いて、加工をするしないを判断してください。
1万円~2万円。
その他の加工代(染色・湯のし・地なおし)
- 糊おとし(湯のし)代金
- 生地の地の目を整える(地なおし)代金
- 白生地(反物)に、模様や色を染めていく(染色)代金
生地の状態によって、加わる加工と必要のない加工があります。
これらすべてで2万円くらいから。
模様や色を染めていく染色は、型染め・手描きとありますが、手描きは高額です。
着物1枚をあつらえるおよその値段相場・呉服店
以上の内容で、およその値段・相場を紹介します。
- 模様のついている「小紋」の反物で仕立てる場合⇒約8万円から
- 模様のついている「付け下げ」や色のついている「色無地」を仕立てる場合⇒約10万円から
模様や色がある反物での誂えは、8万円から30万円くらい
です。
訪問着や留袖で、模様をこれから決めるという着物は、
- 訪問着・留袖を模様をこれからきめて仕立てる場合⇒約30万円から
値段の違いがでるのは生地代が大きい
着物の値段に大きな差が出るのは、一番大きいのは生地代です。
小紋でも4~5万円のものから20万円ほどするもがあり、付け下げや色無地も生地のお値段には幅があります。
呉服屋さんでセールをねらう
呉服屋さんで仕立てるなら、セール期間を選ぶと通常よりずいぶんお値打ちに誂えることができます。
だいたいですが、反物が30~50%オフになるかと思います。
反物以外の仕立て代や加工代は、通常通りのはずなので、生地代が安くなる分お値打ちに。
ネット通販で着物を誂える・値段や相場は?
ネット通販で着物を誂えると、呉服屋さんより20%くらいお値段が安いところが多いです。
- 正絹の小紋で6~8万円
- 正絹の訪問着で10~20万円くらい
化繊(ポリエステル)の着物を誂えるお店は少ないですが、正絹より安くなります。
誂え期間は1週間から3か月・着物の種類でも違う
小紋や色無地で、反物をえらべば仕立てに入れる着物なら、1か月くらいが目安です。
呉服店ではたいてい仕立てせずに、和裁士さんなど専門家に任せるはずです。
立て込んでなければすぐにでも仕立ててえもらえ、事前の加工が必要なければできあがりまで1週間とかも可能です。
仕立てる人、加工する人と違う専門職にわたる回数が多いほど、期間がのびます。
柄を決めることから始める訪問着などは、3か月以上は見込んでおいた方がよいでしょう。
着物の仕立ての行程・順序
着物の仕立てあがるまでの行程を、訪問着の手描きの京友禅で仕立てる場合で紹介します。
<例・訪問着を手描きの京友禅で仕立てる場合>スタート⇒図柄、意匠の相談
⇒下絵を描く
⇒糸目を置く
⇒糊伏せをする
⇒地染めをする
⇒蒸す
⇒水元
⇒地入れをする
⇒挿し彩色
⇒蒸す
⇒水洗い
⇒水元
⇒湯のし
⇒金彩・刺繍
⇒地直し
⇒仕立て
⇒各種加工
以上のような行程を経てできあがります。
国内仕立てと海外仕立ての違い
着物を仕立てるには国内での仕立てと海外での仕立てがあります。
海外の仕立ては主にベトナムですが、海外の仕立ての方がお値段は安くなります。
仕立てあがりはどちらも同じといえる
国内仕立てでは和裁士など専門職の方が仕立てますが、海外の縫製工場で行う海外仕立ては、分業により多くの人が仕立てにかかわります。
どちらも手縫い仕立てで、海外仕立てではミシンは使いません。
検品も確実に行われるため、特に海外仕立てに問題は生じません。
お値段は海外仕立てが安い
しかしながら袷の仕立て代は約2倍の差があるようです。
仕上がりに価格の違いが感じられるかどうかが問題ですね。
日本の一級和裁士が指導する海外仕立てもあり、出来上がりに遜色はないといえます。
実際に、国内仕立ても海外仕立ても行っている呉服屋さんの感想では、納品された状態では問題がない。
ただ、納品後に裾にたるみが生じることがあるそうです。
そのため、どちらがおすすめかというと、国内仕立てとなります。
湿度と着物のたるみにつて
着物は様々な絹布を組み合わせて製作されます。
絹布は湿度に影響されやすく、伸び縮みする性質を持っています。
日本とベトナムの湿度は異なります。
ベトナムでの仕立て後、日本の湿度の変化により、絹布が伸び縮みすることがあり、
ベトナムで完璧に仕立てた着物でも、日本での湿度変化により、たるみが発生する可能性があります。
湿度によるたるみは、多くの場合保証外となり、修正すると追加料金が発生します。
たるみの修正の追加料金は、2万円以上となることがあります。
この修正は難易度が高く、時間もかかりますので、気がかりな点といえます。
また、分業制の限界から、各加工の技術レベルに差がでることもあります。
例えば、裾の縫製はしっかりしているが、袖が浮いている、背縫いはきれいだけど、丸みにムラがある。
そんなことも起こりえます。
もちろん、毎回そうなるわけではないのですが、程度の差こそあれ、実際にこのようなことはベトナム仕立てで起きていることです。
そのため、ほとんどの呉服屋さんでは国内仕立ての方をおすすめしているのが現状のようです。
※海外仕立てですべて手縫いではなく、一部機械を使用して仕立てるところもあります。お店で確認してみてください。
着物の仕立て 誂える・値段/相場は?海外仕立てと国内仕立て・まとめ
ここでは着物を仕立てるにあたり、ざっくりとお値段を計算してみました。
値段はおおよその目安で、礼装などで装飾加工などが加わると費用はさらに増えます。
仕立て代や加工代の単価は、お店により違いますから、幅があることをご承知ください。
<反物のお値段の目安>
小紋<付下げ<色無地<江戸小紋<訪問着・留袖
※紬はお値段の幅が広いです
<関連ページ紹介>
◆着物ができあがったときに確認したいこと・やっていはいけないこと
◆着物の仕立て方・反物からの作り方をわかりやすく!和裁の疑問がなくなる
◆着物をあつらえる・採寸の仕方と失敗しない仕立て方
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