橘(タチバナ)という花は、着物好きの人ならよくご存じの花木ですね。
家紋や着物帯の柄で、よく見かける柄になったのも、「文様としては平安時代末期ごろに現れ」使われるようになったから。
「江戸時代には90家余りの旗本が用いていた」そうです。
蔦(つた)紋や桐紋などとともに十大紋の一つに挙げられているほど、紋として知名度は高いです。
すぐ思い浮かばないときは、ひな壇飾りで、左側にある葉が緑色で白い花を咲かせている木です。
日本に古くから野生していた、日本固有のカンキツで別名は「ヤマトタチバナ」、「ニッポンタチバナ」といいます。
現在は「本州の和歌山県、三重県、山口県、四国地方、九州地方の海岸に近い山地にまれに自生する」だけなのだそうです。
実際橘の花木を、私は見たことがありません。
日本固有の花木でありながら、絶滅に近づいているといってもいい橘は、近縁種には「コウライタチバナ」がありますが、これが萩市と韓国の済州島にのみ自生するそうです(ウキペディア)。
そして萩市に自生しているものは、「絶滅危惧IA類に指定」され、国の天然記念物となっていて、珍しい植物なんです。
(三重県鳥羽市ではヤマトタチバナが市の木に選定されています。)
ということで、現在ではみられる地域が限定されている珍しい花木なんですね。
その珍しい橘で染めた草木染が、ありました!スカーフで展示されていました。
名古屋港区のフラワーガーデンガーデン「ブルーボネット」に橘染めが
橘染めのスカーフを見つけたのは、名古屋の港区にあるフラワーガーデンで「ブルーボネット」というところです。
その園内にあるヨットの形をした「サニーハウス」という、光をふんだんに取り込める明るい施設の中です。
「サニーハウス」は、おしゃれな椅子テーブルがあり、座ると窓越しに船の行き交う風景やの向こう岸の建物が非常に良く見渡せ、ガーデンの散策中の休憩に最適なところです。
で、そこの二階に「香り」のコーナーがあります。
日本人と香り、香りの歴史などにふれて考えることのできるコーナーで、ここブルーボネットがワイルドフラワー(手入れがいらない花)を中心に咲かせている縁でのようです。
日本固有の柑橘の橘の歴史ですが、解説によると第11代天皇垂仁天皇が、お菓子の神様といわれている田道間守に、常世の国行き「非時香果」を探してくるように命じ、苦労してやっと持ち帰ったのが橘の木となっています。
「非時香果」は永遠に香っている果実という意味で、この植物を大変神聖なものとしていたようです。
田道間守は「五月待つ 花橘の香を嗅げば 昔の人の袖の香ぞする 」
という有名な和歌をも残しています
橘の歌は昔の人を思い出して懐かしむものが多く見られるそうです。
ある匂いや香りを嗅いで過去の記憶が思い出されるという経験は皆あると思いますが、この事を匂いや香りの履歴現象というそうです。
私たち日本人の祖先は橘の花や果実の香りを通して、理想郷や魂の故郷としての常世の国、人間のあるべき姿を思い出していたのではないかと、ここに記されています。
日本には多くの柑橘類がありますが橘だけが唯一の日本の原産種であることが、遺伝子の分析で明らかになっているそうです。
ちなみに橘の香りをかぐことができるようになってますよ。
橘(タチバナ)で染めた草木染の染色を見たことって、ありますか?
私は初めてみました。橘の木と葉で染めてあります。
薄い黄色というか、卵の殻の色というか。
練色(ねりいろ)といわれる「生糸を練ってセリシンを除いてしなやかにした生糸や織物のような色」が近いです。
ガラスケースの中ですし、写真なので分かりづらいですが、とても珍しいもので京都で製作されています。
隣にはこれまた珍しい「香時計」なるものが。
日本固有の品種とあらためて貴重さを知った橘、すっぱすぎて食用には向かないそうですが、今後もずっと残ってほしいです。
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