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捺染(なっせん)工場の玄関には「就業中面会謝絶」の札が

捺染の風呂敷大判

徒歩で15分ほど離れたところに、捺染工場があります。

現在では休業中のようでいつも静まり返っているのですが、10年ほど前にはこの工場で染物の一般販売が行われていました。

何度かおじゃまして、写真のような風呂敷や、ハンカチのれんなどを購入したことがあります。

「捺染(なっせん)」というのは、主に型を用いた模様染めで、染料を糊(のり)にまぜて直接布地に摺(す)り付けて染色する方法をいいます。

「プリント」と同じ意味合いです。

染色方法のうち「直接捺染法」と呼ばれる方法の工程は、

染料や助剤をのりと練り合わせて 捺染のりを作り、プリント用の機械(捺染機)を使って、布生地にプリントします。

その後、水蒸気で加熱して布地に定着させます。

洗浄液で洗って、余分な染料を取り除き、水洗い、そして乾燥させます。

最後に幅を整えて製品になります。

このような工程を経て、写真のような染物ができあがるのです。

この工場は大量に製品を製造していたはずですが、私の知る10年前には、稼働する日を限っていたようです。

戸別配布のチラシがウチに配られていて、一般向けの即売会があることを知りました。

行ってみると、工場内の入り口付近に市が設けられています。

捺染の風呂敷大判

これも購入品の風呂敷、「せりさわ」の文字入りです。

ハンカチ、風呂敷の大きなものから小さいものまで、タオルの大小、テーブルクロス、のれん、間仕切りなど、一般家庭で使われる様々な捺染商品が所せましと並んでいました。

卸へ納品する商品そのままの100枚ほどの束のもの、10枚単位で売っているものが多く、3枚セットや単品はごくわずか。

10枚でも同じものなら一般人には多すぎます。なので3枚セットでいくらとかのものを探して買ってきました。

捺染工場の中などは、なかなか入れるものではありませんから、その市が開かれたときは、工場の奥の方を覗き見て商品も見たいし工場の中も気になるしで、気もそぞろに出かけた覚えがあります。

メーカー直売の捺染商品なので、その市では飛ぶように商品が売れていましたが、それでも商品がわんさか残っています。

在庫が山ほどあるようでした。

作っても売れなくなってきた時代なのでしょうね、売り子役をやっていた工場の社員さんが、とても寂しそうな顔をしていたのを思い出します。

幾分でも在庫を処分したい、そんな思いだったようです。

それでも、社員さんの中には、染め方の説明を熱心にされていた方もありましたので、なるほど~っとそばで聞かせていただきました。

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「面会謝絶」?ここは工場なのになぜ?

その時は気づきませんでしたが、先日閉まったままのその工場の前を通ったところ、こんな札が玄関い掲げてあるのに気付きました。

「就業中面会謝絶」

すでに文字が薄くなっていて、玄関を開けようとした人にしか目にはいらないような大きさの札です。

でもそこに書かれてある文字は強烈!です。

面会謝絶という言葉は、病院でしかみたことがありません。

もちろん誰にも会いたくないとか、通すなというときにも、重役室の扉にはってありそうな言葉ですが、会社の玄関にあるのは驚きでした。

それも就業中はお目通りがかなわないという・・・

仕事をしている間は、ぶっ続けで作業を続けないといけないのですよねきっと。

作業工程のところにさらっとかいたのですが、染料を混ぜるのだって、生地にプリントするのだって、蒸すのだって・・・みんな機械がやってくれそうな気がしましたが、そうではないようです。

目で確認するのは当たり前、手作業がいくつも重なっているようです。

水で洗う洗い場は、何メートルあるかわからない長ーい水槽に、水が筒の中からざあざあと流れていましたし、もしかしてそこも手作業でやっていたのかもしれません。

地道な一連の作業を、抜かりなく行って、いい製品を作り出すには、目を離すわけにはいかないということなのでしょう。

「就業中面会謝絶」にして集中して作業するほどの職人さんたちの心意気があったのですね。

捺染技術の進化

捺染の風呂敷大判

(この藍色と白抜きの唐草模様の風呂敷は、眺めるだけで楽しんでます^^)

手作業の製品を手にして、温かみや使い心地のよさを感じることができるのは嬉しいことです。

素朴さや自然な色味も素敵です。

しかしながら、もっと新しいデザインや配色など、好まれるものが変わってきているのも時代の流れなのでしょうね。

詳しいことはわかりませんが、大規模なインクジェットの機械を導入して、人手が少なくても現代感覚のデザインのものを大量に作れるようになっているようです。

今までのやり方では時代の求めるものにこたえきれない・・・ようなのです。

機械に任せるようになれば、染色の職人や技術者は必要なくなりますし、「面会いつでもOK」という札を掲げても大丈夫になる?かもしれないですね。

着物の染色の関係も、着物を着る人が減少したために、染物屋さんが激減しています。

私の住む地域でも、この20~30年の間に、見渡せばいくつかあった染物屋さんが、一件になってしまっています(徒歩15分圏内)。

しかたのないこととは思いますが、伝統的な染色の技術がなくなってしまわないようにと、心の奥で願うばかりです。

きらこよしえ日記
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プロフィール
この記事を書いた人
きらこよしえ

着付け師範として着物着付け教室を運営。簡単着付けの2部着物など考案、雑誌に取り上げられたり、着物用下着など監修者。温泉好きでスーパー銭湯や温泉巡りでドライブ旅行趣味。温泉ソムリエ資格取得。旅系ブログna58.net YouTube運営。

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